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インターンによる柴さんゆるっとインタビュー③

柴さんへのゆるっとインタビューも第3弾となりました! 今回は小林春菜がお送りします。通し稽古の直前のインタビューとなった今回、柴さんは今どのような考えで創作を進めているのか、柴さんの作風の原点はどこなのか、お話ししていただきました。

 

小林: これから2回目の通し稽古(以下、通し)ですよね。今回は全幕台本が出来ている状態での通しですが、どのようになりそうでしょうか。

柴さん: 今回でどういう作品か、というのが大体わかって、あとは、整えていく作業かな、と思っています。僕の通しって、できてるところまでを全部繋げてやってみるっていうような感覚でやっているんです。そういう意味では1回台本は通してみた上で、そこの修正を経てからの今日の2回目の通しなので、これで大体作品の流れが全体的に見えるかなー、とは思っていますね。今日の流れが本道になるだろうという感じなので、今日の通しではその本道にいかにうまく力が注げるように全体をデザインしていくかを確認するって感じです。

小林: では、しっかり最初から最後まで通す、というわけではないのですね。

柴さん: 通しは作品の全体を見る、という作業工程なので、これがどういう作品なのか、なんの作品なのか、というのを見極めるのがすごく大事だと今は思います。僕は高校演劇出身なんですけど、その時はいかに本番通りのことができるかっていうような発想になっちゃっていたんです。通しで作品を1個仕上げようと思っていて。でもそれよりは、ギリギリまでこの作品が、どういう意味、どういう効果を持ったものなのかというのを最後まで問い続ける必要があるので、最近はそれをしっかり確認するために通しをやっています。だからわりとぼんやりした通しが多いんですけどね。

小林: なるほど。

柴さん: もちろんセリフを覚えているとか、場所が決まっているっていうのは、スタッフさんにとっては重要で、僕自身もここをポイントとしては決めたいですし決めていってはいるんです。でもそのことは僕にとってはあんまり重要じゃなくて。通しでの完成度が、そこまで上演時の完成度にリンクしてないってなんとなく感じ始めてきています。

小林: そうなのですね。先ほど高校演劇出身とおっしゃっていましたが、その頃は役者さんをやったりもしていたのですか?

柴さん: 演劇部全員が出演する、というのもやっていましたが、僕は高校演劇始めた時からもう台本を書きたいと思っていました。役者はもう無理だな、と最初から思っていました。演技をするのは楽しいんですけど、単純に緊張しながら、緊張している自分をなんとなく体感してやっているので、多分、一流の人たちとやっていることが全然違うんじゃないかなって思っていましたね。

小林: どうして脚本をやりたいと思ったのですか?

柴さん: 結構いろんなところで言っているんですけど、もともとお笑い芸人をやってみたくて。頭使って色々計算して作品を作って、人を笑わせたりリアクションをもらう、ということにすごく憧れていたんですね。特に、考えたものがそのまま作品になって、それが効果を生むということがすごくかっこいいと思っていて。ただお笑い芸人はちょっと難しいな、と思った時に、似ている職業ってなんだろうと思って見つけたのが脚本家だったんです。それはやっぱり1人の人間が考えたものを発表して、映画とか、ドラマとか、舞台になって、それがまた、リアクションを生む。そういうところが面白いな、と思ったので、お笑い芸人じゃなかったら脚本家かな、と。脚本家が無理だったら、どうなってたんでしょうね……なんかまた違うことを考えてたと思います。

小林: 稽古が始まったばかりの頃に、テーマがシリアスだからちょっとふざける部分を作りたい、ということをおっしゃっていましたよね。やはり最初お笑い芸人を考えてたから、お客さんが楽しむとか笑うとか、そういう明るいリアクションを生み出したいのでしょうか?

柴さん: それは今、僕も、自分で喋っていて思いました。スタートがお笑い芸人で始まってるから、目の前の人に対してコンタクトするっていうところに面白さを感じたんだと思うんですよね。1個頭で考えたものを発表する、作品にするっていうことが面白かったと思うんです。でもそれだけでなく、目の前の人とコミュニケーションしながらそれが作品に発展していく、ということも何か面白いと思っていたから、映画の脚本とか小説ってことにはならなかったんだと思います。生の反応が欲しかったんでしょうね。

小林: 柴さんの舞台を見ていて、舞台装置が見立てを使っていたり形がシンプルだったり、ポスターも色味が統一されていて綺麗な感じだったりとか、全体にすっきりした印象があるのですが、それって何かこだわりがあったりするのですか?

柴さん: えーどうなんでしょう、でもそうですね、見立ては趣味としてすごく好きだと思いますよ。自分の好みとしてなるだけものが少なくてシンプルな方がいいなと思ってます。でも自分の部屋は物で溢れてるんですけど。舞台上を物で溢れさせるというのは、何回かやってますけど難しいですね。1個のものをすごくたくさん使うっていう方が、たくさんの種類のものを使うよりも好きなんだと思いますね。

小林: では、自分が好きなものとか、そういう作品の雰囲気の参考になっていそうなものとかってあるんですか?

柴さん: なんだろう……ちょっと真逆になるんですけど、もともと僕、高校大学の頃は、姉の影響でいわゆる渋谷系の音楽というか、ピチカート・ファイヴっていうバンドの音楽が好きだったんですよ。その人たちはどちらかというとすごくおしゃれな雰囲気で。ヨーロッパとかのデザインや映画のジャケットとか、そういうものを日本風にアレンジするように信藤三雄さんという有名なデザイナーさんがデザインされていたんです。そのデザインのような、ものが多いところからそうやっているのがかっこいいな、と思っていた時期がありましたね。でもだんだん減らしていったほうがいいな、と思い始めて。

小林: なぜですか?

柴さん: 佐藤雅彦さん(クリエイティブディレクター)がCMやゲームやテレビ番組を作り出したのが僕が中学、高校、大学の頃だったと思うんですけど、そのあたりからこう、線が1本あるとか、色だけで伝えるとかっていう方がなんかいいなあ、と思い始めてきたっていうのはありますね。もともとそんなに突出してものをたくさん集めたりとか揃えるほどの興味の対象がなかったので、ある時代のこういう映画が好きとか、このバンドの時代感とか世界観が好きとかいうよりは、なんか線1本が綺麗とか、図形だけでバランスとれててすごい綺麗とかそういう方に感動するようになっていったっていうのはありますね。

小林: 学生時代に影響を受けたものが、今も作風に現れているのですね。現在は柴さん自身が多摩美術大学の演劇舞踊デザイン学科で講師をされてらっしゃいますよね。大学で教えていて、どうですか?

柴さん: あんまり教えてるという感じはないですね。多少丁寧に演出意図とか、自分がこれまでやってきたことを説明したりするけれど、スタッフ部門になっちゃうとなんか本当にもう一緒に作るメンバーって感じで、教えられることはほとんどないですよね。だから授業は、たまたま20人とか30人とかの若い人たちと演劇を作る、ということに対して、自分が必要な作業を説明しながらやっていくっていう感じですかね。ただ、たくさんの若い人と演劇を作るっていうのは僕は自分から仕掛けてこなかったので、そういう意味では貴重な経験をさせてもらっているな、と。それは大学のおかげだな、と思いますね。

小林: では、感覚としては普段の演劇を作っている時とほとんど変わらないのですか?

柴さん: そこまで変わらないですね。僕の直接の学生は俳優のコースの人なんですけど、学科には他にも舞台美術のコース人や衣装のコースの人とかもいるんですよ。今度12月にやる卒業公演の舞台美術は舞台美術のコースの学生がプランナーになっているのですが、まず学生が二人プレゼンしてくれた美術案から1個選んで、それを相談しながらやっています。僕は美術のことについて演出家としては知っているけど、舞台美術家ではないのでその人に美術を教えられないですよね。だから、ただ若い美術家がプランを出してくれて、僕は自分の考えで演出のことを説明しながら選んで、打ち合わせしながら美術プランを作っていくだけで、だからもう相手が大学生とか関係なくなりますよね。

小林: 確かに、大人と学生とで、あまり違いがありませんね。

柴さん: 俳優に関してもそうですね。僕が俳優であれば俳優に関して教えられることがあるのかもしれないんですけど、俳優と演出家だと、一緒に作品を作る為の関係になるから、演出家が演技上手くなる為の方法を教えられるものでもないと思っているので。僕の演劇に対する考え方とか演出に関する考え方とか伝えることはできるけど、それで教わって演技が上手くなるとかそういうのでもないと思うんですよね。でも劇作家になりたいとか演出家になりたい人には僕は教えられるかもしれないですよね。戯曲っていうのはこういうふうなルールがあって、こういうふうになってた方が読みやすい書きやすいとかあえて外れる所もあるよって言ってみんなに戯曲を書かせるとか、それは僕が教えられることなので、実際そういう授業はやりました。ただやっぱり、大学生は僕とほぼ同レベルで、僕が知っていることを紹介するとか教えるってことはありますけど、大学生くらいになったらみんなそれぞれ違う経験をしているので、僕が知らないことをみんなも知っているだろうと思っていて。大人同士と同じように、常にお互いが知らないことの交換があって、影響を受け合う、という感じはありますね。

小林: この作品のスタッフミーティングでも活発に意見の交換がありましたが、学生のうちからプロの方とそれをできるのは羨ましいです……!

 

多摩美の学生さんたちが、少し羨ましくなった小林でした。柴さん、お忙しい中丁寧にお答えいただき、ありがとうございました!

『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』では柴さんの好みだという見立てがたくさん使われていて、シンプルな紙や枠がたくさんの表情を見せてくれるのがとてもユニークなのです。一体どんなモチーフに変身していくのか、ぜひ劇場で確かめていただきたいです!

第4弾は林美沙希と山本茉惟の2人がお話を伺います。次回もお楽しみに!

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